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足についた泥がかわいた
お昼にしようと
いろんな肌の色の祖父母たちが
山から下りてくる
足についた泥はかさかさとしている
祖父母の手をさする
手ぬぐいが湿っている
水筒をかたむけてね
山がゆれるということがあると
祖父母たちは言う
たくさんのおなかから
うまれて
だから山や海が
こわい
そして
鬼と眠る
*
どこからか
ちぎれて
放り出された腕を
こじあけて
リンゴについた歯型だね
それは
田んぼをぬっていく
おたまじゃくしの
5番目の肢だね
それは
握っていた
家の裏側で後ろをむいて
わたしと向かい合う
わたしの穴に
手をさしいれて
取り出した
枝
わかれていく
けれど
ふれる
ふれ
ふれ
ふれ
*
おなかがすいて
ねむたい
おなかがすいて
たてない
きみが
それでも
かけだしたいときに
きみがそれでもかけだしたいとき
だれにもおしえないままに
喉で花火をうつんだ
なんども
なんども
そのとき
きみの目には
花火の火がうつり
たくさんの
肌も髪も
背の高さも
言葉も国も
違うたくさんのきみが
かけだして
ところどころで
転んでも
たくさんの
数え切れないきみの
あざに夜が
目に草が
つめに土が
皺にみずが
まばたきをする
立ち止り
焼かれて
震えるその喉
その喉で花火をうつんだ
だれにもおしえないままに