足についた泥がかわいた
お昼にしようと
いろんな肌の色の祖父母たちが
山から下りてくる
足についた泥はかさかさとしている
祖父母の手をさする
手ぬぐいが湿っている
水筒をかたむけてね
山がゆれるということがあると
祖父母たちは言う


たくさんのおなかから
うまれて
だから山や海が
こわい
そして
鬼と眠る





どこからか
ちぎれて
放り出された腕を
こじあけて
リンゴについた歯型だね
それは
田んぼをぬっていく
おたまじゃくしの
5番目の肢だね
それは
握っていた
家の裏側で後ろをむいて
わたしと向かい合う
わたしの穴に
手をさしいれて
取り出した

わかれていく
けれど
ふれる
ふれ
ふれ
   ふれ








おなかがすいて
ねむたい
おなかがすいて
たてない
きみが
それでも
かけだしたいときに
きみがそれでもかけだしたいとき

だれにもおしえないままに
喉で花火をうつんだ
なんども
なんども
そのとき
きみの目には
花火の火がうつり
たくさんの
肌も髪も
背の高さも
言葉も国も
違うたくさんのきみが
かけだして
ところどころで
転んでも
たくさんの
数え切れないきみの
あざに夜が
目に草が
つめに土が
皺にみずが
まばたきをする

立ち止り
焼かれて
震えるその喉
その喉で花火をうつんだ
だれにもおしえないままに