火曜日


わたしの
恋人は
いつも
夜になると
丘に
なります
わたしの
恋人の
丘は
言います
すこし
静かにして
さらわれるよ
すこしずつ
部位を
抜き取られる
場所に
つれていかれるよ


わたしたちは
肺 を 海 に
心臓 を 川 に
腸 を 沼 に
ひたして
苦しんでいる
わたしたちは
手をつないで
山の 端と 端を
こえようとしたの
目をつぶっていたから
そこが
ただの路地だと
気づかなかった
石は
足元ではなく
まぶたにあたった
だれかが
投げたんだよ
それが

どこを
歩いているのか
どこに
向かっているのか
家族の誕生日を
忘れたのに
ケーキの匂いが
ずっとする
気持ちよかった わたしの 裸
痛かった きみの 服
半開きの くちびる と 目
これが わたしたちの 自然
どこに
帰っていくのか
この 5歳の 誕生日に ?
わからない
くだらない
どうでもいい
わから ない よ
と 口を うごかす と
音楽が
わたしたちの 体を
コンクリートに 押しつける
きみたちは 暴力を したね
とんでもない 争いを 引き起こしたね
顔を 泥水に 入れられて
ぶつかりあう 骨
どこからか わたしが
いつか 踏みつぶして 殺した 
鳥や 猫や 虫 が
スーツを 着て 踊っている
いつか はぎとった 枝や 皮 草 が
心臓の リズムを つくる

なにも みえなくなる ほどの 紙吹雪が まう
ユーリちゃん はやく 言うんだよ
雪 雪 ずっと 雪 だと 言うんだよ
光 光 ずっと 光 だと 言うんだよ
闇 闇 ずっと 闇 だと
つないだ 手に 刻みつけるんだよ
せい だと 
雪 雪 それは 雪だ
ちゃんと 冷たい ちゃんと 熱い
いいえ それは 紙吹雪
いいえ それは 路地
いいえ それは 自動販売

  ユーリちゃん わたしたちのこと また 殺すつもり?

いいえ ここは 街 いいえ ここは 路地
ひとのかたちを した 白 が あたまの後ろで 旋回していく
おそらに のぼっていくのですか
そんなに 罪深くない わたしは まっとうな からだを もってして
どこを 歩いているのか わかっています
なにを しているのか わかっています
かたちに ならない 原 が
わたしたちの 管に あり
白 が ざわめく


  ユーリちゃん また なにか 言うつもり?


わたしは
恋人だった
丘を
けりとばし
花ならば
つぎつぎに
むしり
走り回りますが
波の中で
息をするので
ここが
家である

わかります
ここは


 おはようございます 今日は今日です 


 ユーリちゃんは どちらにしろ 生きます


 おはようございます おはようございます


 本当は 誰の顔も 忘れてはいません


 けれど ユーリちゃんは どちらにしろ まだ 生きます