習い


今日は みな ではらっているようです


お風呂場に
わたしの皮膚が
干されているので
ちゃんと
持ってきてください
ひとは
雪じゃねえし
紙じゃねえし
ことば
ですら
ないので
ちゃんと
わたしの皮膚を
持ってきてください
お祭りの
夜の
路地まで
ちょうどよい
湿り気になると思いますので
やわらかいタオルに
つつんで
持ってきてください


昨日は コオロギの レース が ありましたね
鐘の 音 と 彼女の 声 が とても 素敵でした
それを あなたと 一緒に見られて よかったと思います
二丁目の タケちゃんところのが 勝ちましたね
おそらく 新しい 籠 を 買うのでしょう
今日の朝も 上等な 夜露 でしょう


赤ちゃんの
泣き声で
あなたの腸が
おへそから
はみでる
みんな
うれしそうな声を
あげるので
わたしは
泣きたくなってしまう
虹だ
いや
珠だよ

かもしれない
などと
みな口々に
囃したて
あなたの腸は
いっそう
はみだして
わたしが
見世物じゃないのよ
と叫んだり
本当に泣いたり
できればいいのだけれど
ずいぶん前に
取っ手が
とれてしまったので
わたしたちは
たまに目をあわせる
だけ
しゃらしゃら

遠くの音を
聞く


叔母さんが おもちを やいて 持ってきてくれたんだった
戸棚に しまっておいたから あとで たべようね
まだ やわらかいと おもうよ


 ひとは
 ひといがいの
 ものに
 なりたいと
 ずっと
 思っているので
 旗をふる
 ひとは
 ひとを
 空に放り上げる
 ので
 笛を吹く
 息を
 空気の音に
 変える
 ために
 お祝いは
 視界を遮ること
 です
 昼も
 夜も
 歩きつづける
 ことです


明日には みな そろうと 思います
ほんとうは わかっていました
あこがれ というのは おもち の なまえで
みなで たべましょうね 
まだ すこし のこっています