ピナ


感傷に塗りつぶされる前に
音楽をとめて
出かけていかなきゃならない
むこうがわにみえる
腕組みするひとたちの
服の一部ひっぱって
破いて
破いて
皮膚のかけら
のみこむ
破れないならば
ここまで
ひきずってくるんだ
一度も聞いたことのない
罵倒なら
ひろいながら
腕のちから
ゆるめずに
ここまで
ひきずってくるんだ
ひとりだけでも
ひきずってくることが
できるなら
それを

ってよぶ
そのとなりには
シット
(すわったり)
(癇癪)
(わすれられて)
(やきもち)
きみが脅えないならば
さびしいな
みんなに
逃げられる足があるなら
かなしいな
明日になったら
きみも
わたしも
路上に転がされている
かもしれないのだから
涙をだだながしに
したまんま
したまぶたを
乾かした
まんま
風に悪態をつこうか


風景はながれて
それをうたうおと
きこえてくるっていうのに
ひとたちが歩いて
それをつなぐことば
こぼれてるっていうのに
月や太陽を
待つまばたきが
そこらじゅうに
けど
きみの胸の
なかみなにもみえない
わたしの胸のほうは
白紙の本
ずっとめくるような
ことになっているよ
ウソついて
きれいだ
きれいだ
って言ってるんだ
紙でゆび
切ることしか
ないね


ひきずってきたよ
ここ
どこかなあ
いちばん
丈夫な服をきてた
ひとだね
あなたは
どうして丈夫なのか
わからないから
いやだし
名前もしらないから
ゆびふるえるけど
アイアイ
ってつぶやきながら
からだじゅうの
擦り傷や痣
やさしく(よわいちからで)
なでるから
あなたが
脅えないならさびしい
あなたに
逃げる足があるなら
かなしい
からだじゅうの
擦り傷や痣
わたしの指では
なくて
時間が
自然が
消すのならば
愛は
チワワくらいの
大きさの
チワワじゃないほうの
モンスターなんだね
丘を
くだって
丘を
のぼってきたよ
戻ろうか
こんどは
あなたがわたしを
ひきずっていけばいい
服があるうちは
服を
服がなくなったら
鎖骨に
手をかけて