イタイ/ロール


ほんとうのことをいうのがこわいのね

ひととまじわることがこわいのね

そのくせ

みんなひとにやってもらおうっていうのね

ためしてるんだわ

いやなこ ね !      お父さんはいいました

じりじりと お母さんを かなしませるのは よくない

ひとの顔 ずっと うかがって こそくな 手だ それは

(お母さんが かなしむなんて そんなことあるの かしら)

(あんなに きれいな ぜんまいだけで できているのに)

ひとのふくを ぬがすばかりで 髪も みださないで いやな こ いやな こ

(じりじりと 後退します いいえ 後ろ向きで 前進します じりじり)

(いいひとたちを 責めます ずっと 責めます)

(いいひとたちは いつまでたっても 消え去らないので) 責めました


         気分 とか 感情 とかは よく わからない
         けれど 触れられないものばかり ひかっている
         生きていない ぶぶんは どこだろう
         やわらかく くずれていかない ところは どこだろう
         腐ったいのち 下腹に うずめる ずっと 隠す
         できる顔は これだけ ものほしそうな この顔 だけ
          あげる声は これだけ 土の色した 粉々の 怒り


(じりじりと お母さんのくびを しめます そうしないと お母さんは 泣かないので)
(右目が 真っ赤になる すこし 眠れば 治る)
(ああいう子は いなかったよ お兄ちゃんみたいな子は いなかったよ)
(妹みたいな子は いなかったよ)((かぞくなんか きらいなんだ))
   どこに行っても 血が 線をひく   
(それなりに頭がよくて 気がきいて 話題が豊富で けれど いっぺんに ぜんぶ すてることのできるような 子に)((かぞくみたいな子は いなかった))

ゆるされようと おもっているわけじゃないわよね!

ことばなんかで ごまかそうとしているわけじゃないわよね!

はやく ふくを ぬげよ

それは ふく じゃない

それは ふく じゃない

もっと ぬげるものが あるだろ

   また おかあさんを かなしませる つもり なの?

   おかあさんは みんなの こと 世界の 総称ですね 人類の 総合 です

まだ たりない

もっと みせろよ

じぶんで やれよ

ひとに たよるなよ かなしみも くるしみも いたみも

ぜんぶ じぶんで 加えるんだよ ぜんぶ じぶんで なだめるんだよ

みていてやる から 飽きたら 眠るけれど もっと 楽しませろよ と

(                 )ちゃん   (                  )くん

みんな そこに はいってよ




その解釈は
誤っています
わたしに
さらけだすものなど
なにも
ありはしないので
やれることといったら
おなかを
裂いて
内臓を
みてもらうくらいのこと
ですが
それは
とても痛そうだし
意外と
すべてちいさく
まとまっていないと
不安で
程よく散らからせる
技なら
知ってしまっているのだし
また
ないとは思うのですが
わらわらと
単細胞のわたしたちが
外に
逃げ出さないとも
かぎらないし
まったく
ぎしぎしと音だけたてて
はたらかなくなる腸の
かたちも
わたしはしらないのですから
とにかくもう
なにもないんです
こわいって
ふるえに
ぜんぜん
かてないんです


あんなに きれいな ぜんまいだけで できてるのに
あんなに きれいな ぜんまいだけで できてるのに
どうやったら じんるいの そうごう おかあさんは
じぶんの ひかりを みんなに ぶつけて
きゃはは って わらうのを やめるの
ものすごい はやく はしったあとで
おもいついたみたいに こっちを みるの
わたしは 
その
じんるいの
そうごう
その
せかいの
そうしょう
ぜんぶを
しりたいです
ひと
たちの
こと
です


しりたいのなら 産まれて
いつか 死ぬしかないって ことだって
おとうさんが いつか 言っていたような 気持ちがします


ああ ひとりだね