スキン


肉であることを忘れて骨であるようにふるまう
動物であることを忘れて機械であるようにふるまう
人であることを忘れて都市のようにふるまう
そういうことをどれだけ徹底的にヤレるのか
というレースから脱落して
わたしたちは
今日も違う国のラップを聞く
ドイツ語のラップ
イタリア語のラップ
韓国語のラップ
インド語のラップ
たまには
英語のラップも
脳に残る言葉だけを抜き出して
反芻する
エムティービージェネレーション
これは
自動的だ
ラップを浮き上がらせる
音の粒は
いつも深い所から
やってきたようで
どこの国でもコンクリートの素材は同じか
万引きをしたことのない子どもの数はどれくらい
上から降ってくる固形物にはどんな名前をつけよう
ソー ミュージック
ラップ ミュージック
マイ ミュージック


外にでていく子どもたちと
家にいつづける子どもたちが
かわす言葉は
怯えきっている
抗争は
怯えきっているもの同士では
起きなくて
それはかなしいか
それとも幸福なことなのか
天空にあるオルガンが
飽和して破裂
違う国のラップに
降り注ぐので
おまえのおばあちゃんどこに住んでんだよ
キタチョーセンていい国かな
オニャノコ
ニャアチャン
違う理由で歯のない口でもごもごと
かたちにならない話
して
血豆をつぶした血が
シャツのすそについている
それを
お互いが気づいている
どれだけ
大きい
血豆だよ
まるでバスケットボールサイズ
嘘だろ
おまえらは殴り合える
女の子たちは飴をなめている
おれの
ばあちゃんは
イルクーツクにいるよ
嘘だろ
キム
ゴーホーム ゴーホーム
ホームがなんだろうと
そうラップが言ってる
ラジカセが軋んで
畳がコーラを吸い続ける
ゴーホーム
ホームゴー


いってくる
かえってくる
あう
わかれる
ころす
おどる
ヤる
オワる
クスねる
カエす
たびスル
こもル
ピーす
とぅルーす

よぅ
YO
-
HEla
イく
カエる
ふるエル
とまル
ウォーー
ダマる
さけブ
たたく
たたく
たたく
たたク
HI HI HI HI
あいさつする
トーキョー
ニホンゴで
おかねをかせぐ
殴るのを
見る
ミタ
レースから脱落したわたしたちがかせぐお金でできることは限られている
レースから脱落したわたしたちの想像力は限られている
レースから脱落したわたしたちの経験することは限られている
レースから脱落したわたしたちは今日も違う国のラップを聞く
レースから脱落したわたしたちのお腹はいたくなる
レースから脱落したわたしたちの足はすりきれる
レースから脱落したわたしたちは寝つきが悪い
雨上がりの夜空だ
わたしはわたしにしかなれない
殺し合うこともあるだろうね
愛し合うこともあるだろうね
けど
徹底的にやるなんて無理だ
それが
わかってるだけマシだ
違う国のラップの
しらない言葉が
教えてくれるのは
ただ
ノー
ノーホーム
ノー
ノーセルフ
ただ
血まみれで
うまれてきただけ