膜


鎖骨がいたむ夜半
にくむ 
にくんでいる ?
ぱっかりと
足元には穴が
にくむ ?
それは
どのようなこと
肉 無 ?
ここからは もう
肉 だけしか ないような
どれも 鼓動を もっていない


膿むのは
穴そのものではないことを
幼いころに知り
たたずむ
木を
蹴り上げて
木は
何事もなかったように
傷も傷では
ないと
吹く
膿むのは
縁取りであって
黒い粉を目尻にきつく
しみこませた
風か
回転を
ぶれさせるのは


だれも 鼓動を もっていない
だれも 憎んでは いない
だれも その穴に おちていかない


どの肉も けして 朽ちない


腐っては 洗われ 腐っては 現れ あらわれ あらわれる 


わたしのなかのミニチュアの紳士
わたしのなかのミニチュアの女神
わたしのなかのミニチュアのけもの
わたしのなかのミニチュアの機械
わたしのなかのわたしがわたしに頤をあげさせる
空にむけて 何度でも あげさせる
わたしのなかのわたしがわたしのくちびるから
体液がまじった水を あふれさせる
何度でも わたしのなかのわたしが
わたしの頤に水を ながさせる
川だろうか 木だろうか 光を さえぎり
漏らすのは 葉だろうか 峰が 縁取られ
あれも 膿み だと 光 の 血 だ と
にくんでいる? わたしは わたしの肉を無に したがっている ?
あなたを 殲滅 したがっている ? 無に 
わたしを 染み出す わたしの 穴を クローバー 殲滅 され
た 肉だけが ふくらみはじめ 骨は とけていく 鼓動 が
あの山に 飛んでいき 二度と 戻ってこないと しても
わたしは 幼い頃に 傷をつけた あの 木に
そして 唾をはいた あの 風に
もう一度 さらされ
何度でも さらされ
内臓が ばらける
どれが 鼓動を もっているの
か わからずに
どれも 鼓動を もっていない
と わたしが
言う 
切り離され
山に 向かう わたしの
腕に あなたが 触れないことを
ずっと 知っているのよ
あなたが その腕を じっと
見つめながら 泣かないことも
その腕に 爪をたて 縋りつかない
ことも そして
あなたの 最中に 穴が
ぱっかりと あなたが それを
きつく 感じる ことを
わたしは ずっと 知っていたのよ