わたしは考えているふりをしている
目の前にあるくぼみに
唾をおとすように
海は泡立っていることを知っている
それは唾ではなく
有害な成分によって
続いていくということを侵す
成分によって
泡立っている
ということを
知っている
けれど
すぐに忘れる
ろれつがまわらない
ということで
純粋さを表現する坊主頭


わたしは彼に触れたいと思っているけれど
彼と人生をともにしたいとは思っていないの
ということを伝えようとする映画
子どもの皮膚に浮き上がる水疱のような音楽
その水疱にぶつかる小石のような言葉
マイルストーンに足をひっかけて転ぶわたしが
かかえる足にうかぶしみ


なにが必要だ?


人生の大部分が
セックスとオナニーであることについて
考えることは
人生の大部分が
政治と芸術であることについて
考えることと
同じだ
政治はセックスをかきあつめ
芸術は器用にオナニーをかくす
ただ
動くべきときに動かないからだと
濡れないでいいときに濡れるからだを
ひきずって
歩く
狭い道が
かすんでいる
怖がるなよ
触れたいなら
怖いよ
触れるのが
触れては
蔑み
触れられては
値踏みされる
蔑みや
評価を
こえて
抱き合えばいい
ちがう
罵りながら
抱き合えばいい
殴るわけじゃないんだからと
殺したりしないからと
言いながら
水疱に小石をぶつけるような
プレイで
抱き合えばいいよ
幻想だ
少量の血だから
派手にふきだす
幻想だ
触れたい
髪を撫でたい
髭をすこしむしるくらいに
つかまえたい
髪と肌のつぎめを
撫でたい
泣きたいと思いながら
泣かないでいたい
感情を手のひらで
握りつぶして
恋人の死体をけっとばす
そのとき
地球が反転する


核廃棄物を地中深くに埋めます
地中深く穴を掘ります
核廃棄物を地中深くに埋めます
穴を掘ります
とても深い穴です
知らぬ間に
手のひらはべたべたとした
もので汚れ
こすってもこすっても
とれない
駅で眠る
ひとたちの
となりに汚れを
すりつける
ひとたちの
部屋に座り込んで
眠らないままに
朝がやってくる
ひとたち

まとめて
なにかを言おうとする
核廃棄物を地中深くに埋めます
ここにはなにもない
なにもなくなる
だから
呼吸をいくらやめようと思っても
限界まで息をとめても
またはじめなければならない
なにもないここで
息を吐き出す
なにもない

ひどく薄汚れている
だから
また息が吐き出される