激情ぶるマイク
顔の傷を指差す
激情ぶるマイク
耳を塞いで笑う
激情ぶるマイク
 

ろうそくのように立っているなんて
キレイ キレイ イイコ イイコ
カワイイ  キレイ  イイコ
ろうそくのように立っているなんて
ウサギの着ぐるみの中に入っている
男の汗と胸毛 カワイイ カワイイ
凍傷になりそうなろうそくのように
立っているなんて 嘘だろ
キレイ カワイイ イイコ ダイスキ
リズムがなくなって笑う
汗をよけるようにして
上の方を向く
上の方には何もない
何も見えなくなる
何も見えなくなると
わかっているから上の方を見て
笑う

 
激情ぶるマイクは
きいろい膿のような液体を
溢しながら裏返ろうとする
びわれて
倒れこんださらさらしすぎた
髪に膿のような液体が
降りかかる
モテないっていう妄想だろ
孤独っていう妄想だろ
欠損っていう妄想だろ
口をパクパクさせて
誰に
ちっとも形をなさない
誰かに
 

てんしとかいった?
だてんしとかいった?


膿のような液体が顔にもかかり
ぱくぱくする口の中をいっぱいにする
けれど息はずっと続くよ
足をバタバタさせて誰に
裏返ったマイクは傾いて
ごぼごぼと声をくぐもらせる
ダイスキ イイコ カワイイ キレイ
ダイスキ ダイスキ ダイスキ
ノイズにはリズムが履かされなおして
だぶついただぶついた
みえなくならなかった
ふるえはこなかった
みえなくならなかった
膿のような臭い液体が
どめどなく長方形を
満たしても
みえなくならなかった
ふるえはこなかった
みえなくなると
わかっていた
男のまばたきが
マイクを呑みこんで
みんな家に帰った
みんな家に帰った
声は遠い
口の奥が見えるだけ
膿のような液体に
まみれたままで


みんな家に帰った
激情ぶるマイク
家でちぢこまって
用意してきた深爪から
やっと
血が滲む