白黒の新都市
しなやかな手首で上下運動するポップコーン
8から9へ 9から8へ
往復し続ける回転式チャンネル
かなしいひとたち
あわれなひとたち
かなしいひとたち
あわれなひとたち
どこまでも均一にあかるい
屋上にある公園のように
髪のないうつむきのように
目の周りの痣のように
吹きさらしの中二階のように
ブランコが
誰ものせずに
均一な振れ幅で
誰も放りださずにいる


わたしのけものに
砕いて差し上げる
硬い食べ物を
テーブルに向かって
踊らずにいられないひとや
歌わずにいられないひとを
スローモーションにかける
あるいは
静止させる
XからYへ YからXへ
推移する指


白黒の新都市
ひとりで住む部屋に
必ずできる暗がりそこに
入り込もうとする生き物を
追い払わなければいけないから
縛られた足の指
二の腕に結ぶ細い鉄線
縫い閉じられた内臓
光っているのは
つめたいとあつい
あついとつめたい
をぶつぶつと
繰り返す手足で
追い払わなければいけない
から


わたしのけもの
わたしのなかから
腹や背の皮膚に
濡れた鼻を押し付けて
口を開けては閉じ
開けてはわたしのけもの
小刻みに運動をし続ける
わたしの腫瘍
おいで
おいで
指先に
おいで
爪を浮き上がらせて
眼球が這い出してくる
おいで


テーブルに向かって
まばたきを
踊りつづくひとは回転をはやめ
歌いつづくひとは手をかかげ
火のようにかなしいひとたちはたおれた


差し上げる
わたしのけものに