フォーサイスの余波でかきました

背の線を ふるえる ゆびで なぞった おまえの
ただひろい 背の線を ふるえる ゆびで なぞった おまえの
ほそい ただひろい 背の線を ふるえるゆびで なぞった おまえの
ほそい ただひろい 背の線を ふるえるゆびの つめで なぞった おまえの
ほそい ただひろい 背の線は 隆起し わたしは くうに つめあとを みた
   おまえの           (ブレス)
おまえの 円く 掲げられた うでが しろい ひかりを すいとって
いき わたしは くうに つめあとを みた 円く とびだした おまえの
ほねの つぎめを ふるえる ゆびで なぞった おまえの 弓をひく 背で
降る けものの 血を みた わたしは おまえの 手の甲に 血が 降るのを
みた わたしは みた 血が けものの 降る 手の甲 おまえの 手の甲に はしる
筋を つたう 血を みた おまえの 掲げられた うでが わたしの ひたいに 円く
  つたう     おまえの       (ブレス)
おまえの ゆびが ただひろい くさはらの ただ 
一本の 草を むしるのを わたしは みた おまえの
上下する 髪 血を したたらせる おまえの 髪が したたらせる
のを みた わたしは おまえの ただひろい 背にかくされた 糸を
ふるえる ゆびで ひきだし ちぎりとった わたしは ちぎりとった 血が
ゆらいだ おまえの ただひろい くさはらが ただひろい いろのない ただひろい
  背に     なった  
     風が       ながれた
                       (ブレス)
わたしは いろのない 血に 
いろのない けものの においに まみれ
風が わたしの 肋骨に ながれた おまえの
上下する 髪に 同期して 隆起する わたしの はら
風が ながれ わたしの 肋骨を とおり とおくに おまえに
むしられた ただ 一本の 草の 先端を みた いろのない 血の
そのさきに ただ 一本の 先端を みた とおく おまえの ゆびが
わたしの 肋骨を ふるわせ しろく 風を とどまらせた おまえの 背は
     線を     乱し    むしられた
         草の  切り口の ように   きしんだ   (ブレス)
ただ 一本の 輪郭が くうに 散っていくのを みた
おまえの はらを 刺していた 草が くうに 散っていくのを みた
おまえの はらに あいた 無数の あなを みた とおく むしられた ただ
一本の 草を みた  (ブレス)
しろい 地に おまえの はらの あなが 気泡を つくり
ぷつぷつと けものの 体内を ながれていく はやさで ぷつ 
ぷつ と けものの 血を あふれさす はやさで (ブレス)
      (ブレス)
おまえの ふるえる ゆびが 風を はなし
わたしの 肋骨の 隙間は からからと 乱れた
おまえが からからと とおく ただ 一本の 骨が 
くうに 散って いくのを みた (ブレス) からからと
乱れた 隙間は 風を あばれさせ ふるえる ゆびが しろく
   とおく       (ブレス)
わたしの  ふるえる  ゆびを 
  ただ  ひろい  ほそい  背に
 すべらせて  くうには  無数の 
    けものの  つめあとを  みた
  わたしは   おまえの  ただひろい 
ほそい  背を  ふるえる ゆびで  すべり
   (ブレス)   ぬるぬると した
         わたしの  
   掌を          おまえの  首に
       (ブレス)
おまえの   首に    わたしの  掌を   まきつかせた


(ブレス)   
  

おまえの まるく とびでた 骨の へりが くうに いろのない 血を 降らせる
けものの つめあとは 無数に かさなり くうに おまえの 髪が 上下する 


                 (ブレス)


         わたしの      ふるえる       ゆびで

   おまえの           喉を

               ただ      一本の      草として
      むしった

                         (ブレス)
 
                   おまえの

         眼球   と   

                        頬骨と     の
   
     隙間に   わたしの    ゆびを    さしこみ  
 
                 (ブレス)

          からから    と    わたしの
 
              肋骨は       とびちって    いく



ただ  ひろい  背の  うえで  くずれおちていく  わたしと おまえの  格子
       
       (ブレス)

くずれおちていく   わたしたちの         格子

風が 一本の 草の 先端が いろのない 血を 払う     (ブレス)

くずれおちた         わたしたちの              格子

ただひろい 同期する おまえの 背             (ブレス)

ただひろい 背に くずれおちた わたしの 格子

                            おまえの    (ブレス)




                 



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たぶん、詩を書くひとつの興奮や高揚というのは、
感じたことのある興奮や高揚をくりかえし、
なんども、体験しなおしたいという欲望からくるんだろうな。
それがどのような高揚であろうとも、だ。
そういうとき、どう伝わるかなんて考えていない。
ただ、あのとき、を、何度もつかみなおしたいだけ。
血湧き肉躍るとはよくいったものだ。
ことばに、よって、それが、できるのなら。
ことばは、まったく、肉体や気配には、追いつかない。
けれど、肉体や気配をもういちど自分にもどすことはできる。
所詮、ことばは、止めピンにすぎない。
けれど、止めピンがあるおかげで、くりかえし、
あの、なにかを、たちのぼらせることができる。