俯瞰で


トイレのマットをふたつに折って
そのあいだに足をいれて
空をみた 長方形の隙間
なんで おしっこをするときは
いつでも うえからのふるえなんだろう
肩をすくめると すこし電球がゆれた


子どもの叫ぶ声がして 沈殿していく台詞
すいませんでした
もうしわけありませんでした
いつもおせわになっております
このたびはよろしくおねがいいたします


きみのいうところの繊細さや切実さとやらの正体は?


空をみる 足と足のあいだにうすくながれている水をみる
かさかさとした ふとももは しゃあという音をたてて


きみいのいうところおのせんさあいさあやあせつじつさあやらのしょううたあいはああ?


うつろなけしき 遠くからはわるい予言みたいな合唱のこえがきこえてきて
でんせんびょうのような雲が くびのながい目にはみえない虫をまきちらして
いるようで 回転は はやくなる すこしづつ みんなそれにずっときがつかず
いきをきらして


空をみる しょうたいはしょうたいはそのしょうたああいはあああぁあぁぁぁぁしょうたあいはあああああ


空をみる 足と足のあいだをたれるぬめりをみる
さらさらと崩れていく 口のなかの世界で はしから すぐに
空をみる 感じやすいことはセクシーなこと?
誰のものでもないものをさりげなく笑顔でけれどうつむきながら持ち去るしぐさ
ひとをじろじろみる癖 ことばよりもからだがさきにまきつく曲線をつくる
きみを傷つけるのはいつもきみ自身


その正体は?からだにかたちのないものがあふれていて 正体は?その正体は?


トイレのマットをふたつにおって
そのあいだに下着をいれて
はだかのままベッドのうえで
あしをかかえた
ミネラルウォーターのペットボトルのらせんにそってのぼる煙
からっぽのぶぶんにはわたしがいるばしょで
わたしであったくうはくで ペットボトルワールド
ばかなやつらがばかにしあう それがえいえんにつづく
ゆっくりしんでいくことしかできず
しんだことにも気づかないで
酒をこぼし水をこぼし震えをもらし相手のからだを通りぬける


ワールド つばをはく
きみを 傷つけるのは いつも きみ自身