半身


まるで
極寒の地の
ような
サウンドスケープ
とか
言ってんじゃねえぞ
居心地悪く
汗をかいて
踊る
だれにも
会いたくない
なまえを
呼びたくない
ことばを
なげる術を
なくしたところで
肩を
ぶつけたら
骨が
みえない火花
あげる


コォォォォォォォオ
(だれにも 会いたくない)
(目を 開けない)
ォォォォォォオ


彼女はいつまでも気高かった 
たくさんの男や女を からだに通して
通さなかった男や女について 数億の嘘をついて
月がでていると だまりこんで 先を行く
けれど いつまでも  高潔ってやつだ
そうして どうして? 動かなくなったって
聞いたよ 数億の 小さな手 指のない
ちいさな 手が 首を しめる 頭蓋が あおく 
そまる 元気なの? 元気だよ わらうの?
わらうよ けたたましく そのあと ささやかに
壊れているよ からだが
階段から 転げ落ちた
容赦なく 元気だよ
元気なの? どんなふうに?
無数の あたしのことを
あたしの いない 間にも
傷つけてきたの?
彼女ほど気高いひとをみたことはない
すべてのものが
彼女のからだのなかでは
かたちをなくす
すべてのなまえが
彼女のあなのなかで
溶解する 
けれど
結局
そこにいる
かえって
きて
影が
ひきつれる
まだ
硬いのかな
きみのからだの
先端は


ルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウ
(だいすきだよ)
(いちばんだよ)
(とくべつだよ)
きみのからだになにひとつのこらない
きみが反響させる呪文
(だいじだよ)
ゥゥッゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
ぜんぶ忘れちゃえよ
恨めしい顔も
あたし したんでしょう
抑えきれずに
(ぜんぶ 忘れちゃえよ)
(言いながら)
(ぜんぶ 忘れている)
(ことを 知っている)
(ただ 自惚れたかった)
(だけ)
きみのからだになにひとつのこらないと 知っていたのに
完璧に 知っていた あたしだけが
きみのからだにはなにひとつのこらない
(ぜんぜん うつくしくないのに)
(ただ かたい かたい かたかった)


けれど うまれたのね     おめでとう      ざまあみやがれ       いやだ


まるで
極寒の地の
ような?
まるで
シロクマの
剥製の
ような?
何度でも
閉じ込められてきた
箱ならば
いくつだって
経験した
風景を
呼びはじめたから
彼は
もう帰らない

わかった
石のように
電車の中積み上げられた
わたしたちは
呼ばれない
あたしは
どんな卑怯な手を
つかっても
生きのびる
いつまでも
呼ばれないように
からだを
つかう
まるで
果てのような
サウンドスケープ
ありあわせの
体温で
まかなって
ただ
いやらしく
彼女の声で
あおい頭蓋から
ひっぱりだした
彼女の声で
からだの内を
なでまわしている
貴い

言った