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ひさしぶりに映画をみる
梅蘭芳
レオン・ライが演じる梅蘭芳は空白
まわりのひとたちは色濃い
どうしたらいいのかわからない
ということを体現することを
みんな誰かに押し付けているのかもなあ
そうして、それが極み、だと泣いているんだ
うつくしさ、というのは、空(から)であることだって、
空である殻だという、幻想を背負うこと
他人の感覚がわからなすぎて困る
どれくらいだと痛いのかな
眠れないってことはなんだろうな
叫びだす地点はどこなのかな
どうやったら泣くのかな
高い声をだして
約束をまもって
つなわたりする
わたしはわたしの肉の気持ちが
わからないので
わたしは用意します
息が上がるときのピッチや
髪を触る頻度や
そのときの指の形
ひきつけ
のような動きまで
わたしは用意して
ああ これが 感情ですね
確かめます これが キ ド アイ ラク
それは 中間地点
あれは 三分の二地点
わたしはわたしではない誰かによって
生起させられます
だから
本当は
わたしをぜんぜん知らないときのきみたちと
街ですれちがいたい
ぜんぜんべつべつの街で
未来はきっとそうなると信じて
わたしたちは抱き合ったりキスをしたりしている
そしてたまに陰口をたたきあったり
熱に浮かれたりする
忘れたふりじゃなくて
一瞬なにもかもなくなるために
もういちど
まっさらな手を
握るために


まとまって髪が揺れる
顔の凹凸がつくる影
しろくあかるい雨
たどたどしい
年寄りの恋
かるい
銃声