WORLD


階段一段あがって
手をさしのべないで
風を口笛で刺さないで
始末におえない
胸にひろがる
じんましん
痒くて
毛布はきみの一部ではないから
服を着てドアから出て行かなけりゃ
床をひっぺがして消毒しなけりゃ
生きていけない
性欲に首ねっこをつかまれて
ママの口から宙ぶらりん
目を半開きにしたまま
どこかに連れてってくれるって
勘違いしてしまいそうね


お兄ちゃんが
胸や腹の赤みを
ばり ばり と
ヘリコプターのような狂気で
こそげとっていく
胸や腹の赤みは
白にまとわりつく
赤そのものになる
階段一段さがって
顔を近づけないで
うたを囁かないで
そんなことよりも
ワイヤーで
白を結んで
わたしに
何千という乳首を
つくってちょうだい
乳房をきれいに削ぎ取ってから
お兄ちゃん
お花畑みたいね


ワイヤーが
濡れて
金属のにおいが
満ちる
生きていけない
と言うかぎり
みっともなく
胸を上下させ
息を吐くの
お はな ばたけ 
は は は あ
みたい は あ ねえ
背中に
階段のあと
それは
痣になり
ママは
一度だってわたしを
口にくわえてくれたことなんかないわ
生まれたときから
わたしの眼球は濁っている
風を殺さないで
舞い上がるものを
つかまえたりしないで
わたしは
どこにもいかない
階段から何千の手を
伸ばす性欲が
足を押さえつけ
わたしを
わらわせる
なかせる
うたわせる
けれど
風を刺さないで
わたしの胸から
痒みが ぺり
と 剥がれ
さあ 舞い上がって
いく
きれいね
きれいね
抱かせてくれるでしょう
背に
赤い星を
飼っているきみを
そこから
吹き出す 
白を
わたしの首筋に
擦りつけ
きれいよ


みな
目をもたない
お花畑
ここ
すべての殻

ある