・5区

天国みたいな気分で
あるいている
天国みたいな気分だから
あるいている
天国みたいな気分を
まっくろに
ぬりつぶしてくれる
街にでるために
歩いてる
みんな本当に死んでくれよ
って気持ちを
手に入れにいくんだ
天国にいるみたいな気分だから
どの街にでれば
どの路地をいけば
どの店にはいれば
どの階段をくだれば
いいんだよ
みんな死ねよ
って心底
思わしてくれよ
楽家
ぼりぼりと
せんべいを食っていやがる
そうして
うまいなあせんべいは
と言っていやがる
そうだ
そうだ
せんべいはうまい
なんて
わたしは
絶対に言わない
からだを
絶対にゆらさない
奇声を
絶対にあげない
指を
絶対につきあげない
そうだ
そうだ
せんべいを食うのは
家でやれ
まっすぐに
鳥が
落ちてくる
イメージで
死をとらえるならば
この
天国みたいな気分は
ほんとうか
ほんとう
ほんとうだよ
なんて安っぽいイメージ
なんて陳腐な言葉
なんて安易な感情
けどさ、おい、
そこの電柱、
そこの音楽家
そこの猫、
そこのコンクリート
そこのおまえ、
おまえだよ、
けどさ、
おい、
わたしには、
この
真っ白な骨を
ぐつぐつと
煮込んで
おまえに
いいにおいを
かがせる暇なんてねえ
ねえんだよ、
本当にみんな死んでくれよ
ビリー・アイドルみたいに
くちびるを
もちあげて
もちあげて
ああ
きもちわるいなあ
ダンシングウイズマイセルフだ
っていって
わらって
ごく単純に
すごくさ、いいことが、あって、
いま、ものすごく、いい、きぶんで、
ほんとうに、天国にいるみたい、だから、
ダンシング・ウイズ・マイセルフ、だから、
だれの、腕を、とればいいのか、
わからないから、
天国みたいに、かすんでるから、
足がもつれ、あるいてる、
あるいている、あるいていく、
どこだ、
あいつらを、
ぶちころせる、場所は、
きもちわるい、
って、つぶやいて、
わらって、空が、骨ばっている、
おまえらに、
おしえてもらうことなんか、
なにひとつ、ない、
だから、
どこにも、いけない、
死体が、重すぎる、
ああ、しあわせだなあ、
自分は、しあわせなやつだ、