おぼれる たぶん
サーカスについてどんな風に話せばいいのかなんてわからないまま
おぼれる たぶん

ふくらんだぶかぶかのむねを手でおさえたまんま
ひきずるもののないお尻をあげる 水はどこさ
顔をつっこむための水はどこに 姉さんみたいな助け
ほしいの バケツの水 姉さんの悪意
ほしいの きみの 引きずる 立板 
まわるの 姉さんの プリーツが
そのことについて話せばいいの
それがサーカスについての
曲線と直線で
おちる隙間に 
おぼれる 
たぶん


手を隠してるけど
本当はずっと触りたかった
くちびるを噛んでたけど
本当はずっと口を開けたまんま
いたかった いたかったな
太陽のかたちをずっとわからないな
線にヤラレルな いつか
線になるまで 千切られて 
太陽のかたちを
ずっとわからないな
きみの
下腹部のあたりにある
サーカスのことを
話す言葉
きみはもたないの
だから
きみの
下腹部のあたりにある
サーカスのことを
知りたくないよ


本当はずっと触りたかった
よくやったよって
殴りあいたいの
殴りあいたい?
くちびるのうらが
きれたら合図だって
拳をにぎって
わたしたちの骨
まるでニワトリのあたま
みたい かたまったまんまの
殴りあい
手足が一本もないよ
塊からすこしだけはみだすけど
わたしたちの骨
本当はずっとずり落ちて
遠ざかる
裂け目
よくやったよって
ゴミを蹴っ飛ばして
山のてっぺんだ
もうここは
登ってきたわけでもないのに


おぼれる?
たぶん?
きみのサーカスに
おぼれる
たぶん


姉さん
助けてって
わたし
言われたくない
姉さん
助けてって
姉さん
父さんは
どこって
わたしが
おまえの
かわりに
何度でも
言って
やるよ
きみの
サーカスを
ばらす


ぜんぶ片付けてさ
それから
そこに寝転ぶことから
はじめたらいいの
たぶん おぼれる
それから 血のつながりを
呼ぶ言葉を 忘れる