あかるい夜


あかるい夜にしゃがみこんで
いたむお腹をさするとき
ちかちかしたクラゲが
あたまのなかに広がって
毒を飲み込んだ
手や足が
すこしずつぶくぶくと
膨れ上がって
足を曲げることもできなくなって
あかるい夜
あかるい夜
影をつくる
からだを下がっていく
いたみが
うれしいとおもった
親指を他の指で握りしめて
たぶん
かんたんにわたしは死ぬ
いつか


時々どうしようもなく
きたないものを見る目で
見られたいと思うよ
時々どうしようもなく
しまわれたまま忘れられて
薄汚れたお守りになりたいと思うよ
ちいさいもので
それからまるめられて
捨てられたいと思うよ
時々どうしようもなく
大事に思う人たちから
すっかり忘れられてから
彼らにラブレターをかいて
尾行して
時々どうしようもなく
白い目で見られたいと思って


謝りたくないときにいつも謝る
あかるい夜に
道路の真ん中に
はだかで寝転がって
その上に
中国の朝がきて
何千もの自転車に
轢かれ続けたい
そのとき
わたしはかんたんには死なない
けれど
わたしはいつか
かんたんに死ぬんだ
わかってる


どうして
こんなに夜が
あかるいのか
どうして


どうしようもなく時々思う
わたしたちは
四角く区切られた
あそこに戻って
好きに順番をつけたり
順番にボールをぶつけあったり
順番に悪口をかきあった
あの牛乳をふみつけたような
においがする
あそこに戻って
また
殻のような
残飯まみれのわたしたちだと
もう一度
思い出したいのかもしれない
あそこに戻って
とぼとぼと
あかるい夜を帰りたい


嘘っこの賞賛や非難
嘘っこの友情や愛情
嘘っこの才能や価値
あかるい夜は
棍棒のように
わたしの頭を
打ちつける
嘘っこの賞賛や非難
嘘っこの友情や愛情
嘘っこの才能や価値
わたしは
村をつくりたいと
おもう

とぼとぼとあかるい夜を帰りながら
村をつくりたいとおもう
縛られて捨てられたあとに
ひとりの村をつくりたいとおもう


ぼくはたまごからうまれたこども
ときみは言った
きっとたまごはきれいだったね
たまごのなかはぬるぬるしていて
きっととても気持ち悪いんだ
必死で
わたしたちからだをかわかしてきたけれど
あかるい夜に
べっとりとへばりつくからだ
うねらせて
いつかわたしはかんたんに死ぬ
けれど
きみに殴られて蹴られても
わたしはかんたんには死なない