隙間にあるのはただ草をちぎるおと
ぶちぶちぶち ぶち
おまえの顔が血と体液にまみれて
おまえの目が虚空をみる(なにもみえていないけれど)
夢で見た
おまえの顔は数千のぼこぼこと
うごめく顔になって
ほらあなのような球をなくした目を
(なにもみえていないけれど)いっせいにむけた


わたしの右足と左足との間には
ちぎられた草がちいさい山をつくって
遠くからやってきた野球のボールが
おまえの顔に直撃するまで下を向いていた
歌をうたえよはやく
くちびるをかんだままうたえ
どうしても見えてしまう薄い靴下を隠したくて
ズボンのすそをひっぱった
ひっぱったままちぎられた草でおまえの血を拭った
(ただしくはわたしは草を食った)


唾を飲み込んだ
血の味がするとおまえはいった
わたしは本を読みすぎてくちびるががさがさだ
歌をうたえよはやく
もうフレーズがおもいだせない
ゆっくりと粘膜がはがれおちる建物の
口角をもういちど切りながらうたえ
はやく
おまえとプロレスをみにいった
メインの青コーナーの出場曲だようたえ
エンジェールだ
エンジェーール
(ただしくはわたしは草を食った)
(みえていないけれど)
(野球帽の匂い)
つばさのおれた
(わたしの首にわたしの指をくいこませた)
つばさのおれたエンジェール


夢で見たおまえの
鼻のかたちもわからないくらいの
おまえの夢で見た血まみれの顔に
鼻をすりつけて
歌をうたえよはやく
歯を折ったわたしが
おまえのからだのうえで
どすんどすんとステップをふんでやる
舌をちかづけておまえはしょっぱいな
しょっぱい
しょっぱいな
ちぎった草が空から際限なくおちてくる