ヒストリーオブバイオレンス

頭のいい弁護士の妻と幸せな結婚生活を送っていた、カフェを経営するトムが、カフェにやってきたギャングを殺してしまうことで、トムのギャングだった過去があかるみに、、という話。
ヴィゴ・モーテンセンがすごいです。目が不透明で。。
アクションがすごくコンパクトに行われる割に、死体とか潰れた顔とかいちいちじっくりうつす。まさに、余計な戦いがない。一気に殺す。その緊張感がすごい。そして、一気に殺した、すなわち相手を壊した、あとにくる帰結を映す時間をとる。
でも、ヴィゴ・モーテンセンは無表情。いや、表情はあるんだけど、結局表裏一体のまんまなんだなという感じの顔をします。
そりゃそうだー、殺すときに一切迷いがないんだもんね。
一気に殺す、本当に。でも、なお、息子に暴力で解決するな、と言う。
トムという人の底知れなさとなおかつ、いまの生活をどうしても手放したくないという浅い夢がごちゃごちゃになってでてくる。体の中が無限にひろがる生ものだとして、その中をずっと歩いてる感じを受ける。
原作がコミックなだけに、なんというか、、マフィアの描かれ方はステレオタイプで、それがまたおもしろかった。有刺鉄線で目えぐる、とかね。目ヤラれてるっていうのは、基本みたいな気がしてしまう。。アクションの設定の仕方も、アクションを主軸に置く映画的な設定の仕方だし。カフェで、お屋敷で。また、お屋敷がすげーー大げさ。ゴッド・ファーザー?みたいな。
どこまで、そういう部分を意識的にやっているかわからないんだけれど、見る側にある暴力への欲求と不快を同時に引き出してくるような設定になっている気がして、それがすごいなあ、うまいなあと思う。いままで何度も見てきたカッコいい暴力シーン設定のなかで、それを否定しつつも体と頭が反応するままに一気に的確に人を殺していくトム。その状況に影響されていじめられっ子だった息子がいじめっ子を流血するくらい殴り、トムに目をえぐられたフォガティを銃で殺す。息子がいじめっ子と事をおこさないように言葉で回避する様を冒頭に持ってきてある。それがとても象徴的。全部が象徴的にうちたてられて進んでいく映画でした。
ある意味、暴力や殺人というのは、偶発的なものなんだろうなあと思います。それが意思を持って行われているものであっても。迷いなく行われているということはそれは必然であると同時に偶然の帰結なんだろうと思います。冒頭のシーンで、最初にトムに殺されるギャングがモーテルの従業員の死体をぬって水を取りに行くんですが、そのときにものの配置をなおしたりする。結局のところ、もともとの暴力性というのは誰にでもあって、そういうものが偶然に暴力に帰結するのかもしれないと思わされます。
セックスの設定もすごい。奥さんは頭が良くて、弁護士。その奥さんが10代に戻りたいといって、チアガールの格好をしてくる。。チアガールって。。。日本でいうブルマと体操着みたいなもんなんですか?いや、違うだろう。。とにかく、よくわからない。チアガールの格好してくる奥さんは、生真面目に少女時代送ってきちゃったんだろうと想像されるわけです。その奥さんが、旦那が昔ギャングだと知る、どうして人を殺したのか、お金のため?楽しみのため?と聞く。そうすると、トムが「ジョーイ(トムの本名)は両方だ」と答える。それにきもちわるくなって奥さんは嘔吐。。また、名字がストールで、そこにこだわる奥さん。そういうやり取りのあとで、階段のところでセックスするわけです。かけはなれた子ども時代を送ってきた2人が、それを認識したあとにするセックス、ってなんかすげえなあ、、と思う。しかも背中に痣ができるくらいに。やっぱり、奥さんは否定したい気分が大部分でも、やっぱり、相手の過去を思うと興奮してしまうと思うんですよね。。。そういうのが極端すぎるくらいに表現されていて、なんというか、心苦しくなってしまいました。。うう。。
なんか、長くなったな。。
とにかく、役者がみんなよかったですね。息子の薄すぎる顔立ちにしても、奥さんのたまにそれは女優としてどうなの、、ってくらい疲れた顔をさらけだすところとか、、。ステレオタイプに演じ続けるマフィアのひとたちも。すごくおもしろかったです。