ノー・ヒル



きみが
なにをしゃべっているかはかんけいなかった
きみの
ことばはわたしがしらないことばだったし
きみの
ぶんぽうやはつおんなんかはサーカスのようで
からだ
ぜんぶがかたいわたしにはわかるはずなかった
きみが
なにをしゃべっているかはどうでもよかった
意味は
鳥がとまる電線の位置みたいなものできまぐれ
ワンツーワンツー
ボクシングのリズムで鳥は


きみが
しゃべっているということ以外気にとめなかった
きみが
しゃべっているってだけでよかった


きみを
ばかにするやつはみんなばかだ
このよは
ばかなやつであふれてる
警察に
つかまったことのない犯罪者たちで
窒息しそうな
数字や索引のとりあいがつづいてる
きみを
ばかにするやつはみんなばかだ
ばかなやつらは
じぶんがばかだってことに気づかない
やつらの
なげなわみたいなことば
わたし
脱いだジーンズに足もつれて
転びそうになった
ばかやろう


六本木ヒルズにいったよ
いとこの結婚式だったんだ
高いところに
行きたがる人たち
服をひっぱりあって
手に手に色を混ぜあい
もつれながら
夕方のあかいそらに
撃たれて
焼けただれた街をみるけど
ここだって
充分に死に絶えてる
白い砂に
刺された
節のある
植物
あふれては
戻される

なんども舌を
噛む犬
痛快だ
ばかやろう




きみに
てがみをかくときみがきえる
きみに
てがみをかくときみがきえる
きみを
なんどけしたらすむんだろう
ワンツーワンツー
サーカスは鳥のリズムで
できるだけ
ゾウの足跡のかたちや
空中ブランコの軌跡を
電線をみあげながら
紙におとしていく
きみが
しゃべってるってだけでよかった
きみが
しゃべっているって
だけで
気まぐれな鳥のリズムで
ステップする
意味を
撃ち落とさなくて
いいって


やけただれた町に
降りて
きみが
しゃべっているのを
貧乏ゆすり
しながら聞くんだ


あしたのこと
あさってのこと
なんどもくる
あしたのこと
あさってのこと
ばかやろうと
これまでと
いまからの
家のこと