うそなつ



うえをむいた
蛇口にくちをつけて
水をのむ
がっこうの水のみ場は
小さい石を
かためた全体的にみれば
黄土色っぽい
素材でできている


泣きたかったけど
泣けなかった
ってこずえちゃんは
言った


泣きたくなかったけど
泣いちゃった
けんたくんと
どっちが恥ずかしいんだろう
って思ったけれど


知らない


いつも
自分だってことが
嫌になる
いつも
自分が大好きで
自分以外のことは
何にも考えられなくて
それだけ


水たまりがかわく寸前に
ホースでまた
水をたす


今年の夏
わたしは
セミが死んでいるところを
10回見た
ヤモリが死んでいるところは
5回
トカゲがみじかい前足を
おなかにあてて死んでいるところは
1回


わたしは
おばあちゃんが死んでいるところは
1回
おじいちゃんが死んでいるところは
1回
ずつみた


ななめうえには
太陽がある
太陽の輪郭って
見たことがないな
太陽の輪郭ってのは
ほんとに
まるいのかな


あつい
あついて
だまっている
蛇口に
風船をくっつけて
ぶんぶん
ふりまわして
砂に
みずがとぶ


ベランダに
ずっといる
ヤモリが
すこしほねになる


あたまのなかの
グラウンドに
あめがふる


すてられた
エッチな本と
ふくらんだ
風船
あついあめ
あついあめ


こずえちゃんは
おかあさんになった