いしいしんじ 「ポーの話」

読了。


途中まで読んで、
これは違う世界の物語だけど、
ファンタジーじゃないなって思った、
わたしにとってのファンタジーってのは、
わくわくして先に行きたい気持ちをくれるものだから。
ちょうど中盤くらいが読めば読むほど、
一行一行が喉につっかかって、
たまっていくみたいで、
すごい息苦しさを覚えた。


わたしたちの言いたいことといえば、
ほんとうにすこしで、
けれど、ほんとうにすこしのことは、
言っても言っても言い足りないし、
言っても言ってもほんとうに
言えたんだかなんだか、
そもそも自分たちは、そのことが、
ほんとうに、わかってるのかって、
思って、
でも、わたしたちは、とっくに、
ぜんぶ、わかっているんだ。
ぜんぶ、わかっているうえで、
言葉をつくして、迷う。
生まれた、ということだけで、
わかっていることを、
わたしたちの言いたいことといえば、
そのことだけで、
ほんとうに、いびつで、
わたしたちの物語や、文字や、言葉は、
とても、いびつだ。
わたしたちは、いつも、もときたみちを、
もどるだけなのに。


水と油はいつまでもまじらないけれど、
ずっと、となりあって、
わたしたちと、
わたしたちのものがたりやこえやことばとは、
そういうかんけいなのかもしれない、


ポーが何かを、
総合、したわけじゃないんだって、
でも、わたしたちは、
ほんとうは、世界中に、宇宙中に、
息が続かないところにも、
いるんだってことを、
ポー、ポーや、って、
ほんとうに、そうだな。


油みたいにおもい
フレーズを掻き分けて
友達のうちから帰る
帰り道で
最後まで読んだとき
泣きそうになった
みず、みず、
みずは、あぶらみたいに、
とろとろしていて、
みずは、
はなとつちがまざった、
においがする、
名前をつけた
なまえをつけた、
なまえをつける、という、
ポー。
ポー。


ぜんぶが、
ぜんぶ、
すべてのところに、
あるって。


最後まで読んで
わたしたちのうごきは、
いつも、
ここにかえってくる、
うごきだとおもった、
すべての脈が、
そう。


そう。