周期


おとこが
あかんぼうの
はなしを
している
おとこのこえは
ひどく
かわいている
夏が
二度とは
来ないことに
なったのを
知っている?
だから
とろけたあと
とがりついた
皮膚の凹凸は
もとにもどらないし
草は
ずっと黄色いままだ
あかんぼうは
ちいさかったことが
ないので
ははおやは
だれのことも
そだてることなく
死んだ
夏が
もう来ないのを
しっている?
がびがびに
なった
毛のかたまりが
電信柱に
等間隔に
ならんでいる
したたっているのは
それも
固形だ


おとこの
はなす
まじわりは
かわいているのに
わたしの
あたまの
断片は
あせばんでいて
像をむすばない
たしか
象のうえで
たたかっていた
筋肉が
ゆれていた
まったいらな足が
土をふみならすから
おとこの
はなす
赤ちゃんは
かわいている
おそらく
毎日
紙を
ぺらぺら
はがす仕事に
ついているのだろう


きみの仮想が
ギターのように
わたしに
つきささるとしても
所詮
きみは
地下鉄の階段を
きれいに駆け降りる
ことばかり
考えているんだろうし
誰かの
まるまった
背中の
骨の数を
数えながら
じぶんのおなかを
なでているんだろう
ああ 森で生活なんか できない
わたしが
うみだせる
きみは
平面だ
軋みをしらずに
ピルエットだ
56分の1サイズの
おかあさん豚の
フィギュアの
下で
押しつぶされている

内臓が
ないので
机は
からからに
かわいたまま


さしこもう
わたしの
とがりついた
表面を
さしこもう
よじれて
やぶれる
また
かわいた
とがりが
あらわれる
だけの
それを
くりかえし
やろう
水分を失えば
死んでしまうことを
わたしも
きみも
信じたくなかった
濡れている部分が
言葉を
夜通し
つぶやいているのに
聞こえないふりをした
運動
感情
ひとつの
音が
生活を
台なしにする
手に入らないものを
口を開けっ放しにして
見つづける
快感が
腹の中で
腐った
夏は
もう
こないんだってさ
草は
黄色いままだ
きみが
草だって
それが黄色いなら
わたしが
ひきちぎって
口のなかを
溢れさせても
いいだろう
だって
きみは
もう
黄色いままなんだから
ずっと
黄色いまま
わらっているんだから


さあ
産まれるなら
産まれてくればいい
あせもだらけで
風に吹かれれば
それだけで
きみは
泣くだろう