チェイン

階段にブーツを投げ出して
ぼんやりとくっつきあう唇を眺めた
ゴミ箱のなかの落下
膨張する地下室
ロッカーの裏にステッカーを
大事そうに貼るみたいに
点と点を結んでいく
ほとんどの動物にとって交尾は楽しくなんかないんだってさ
星と星をつなぐものはなんにもない
この世には線なんかありえない
全部が点だっていうのも嘘だ
ぎしぎしともつれ合っている空間たち
喉の奥まで占領されて
切り離されていく
尻尾や毛
そして金属や布
そのどれもに所有格をつけていたはずなのに
なにもついてこない
腰は縦ではなく横に振れ
傾きをひきもどす
傾きをひきもどす
そうやって鳴らし続ける
両手があがらなくなったら
切り離される
やけに埃っぽい
砂地だから
砂まみれだ世界は
絶妙な開き方で倒れる
口も手も股も
すべて絶妙な開き方で倒れる
キスをするときの目の開け方なんかはクソくらえだし
砂にすべて押しつぶされて誰かの顔なんか忘れた
これは慣れた身体ではない
覚えられていく関係性なんかではない
そしてどこにも線はない
境界にはセンスがない
金属の腫瘍は
風をつかまえている
動物はなににも吠えない
薄暗い
だまっている
砂を舐めて
切れた弦や割れた武器の
先にたまる水滴
まばたきやこぼれ
これは慣れた身体ではない
乾いているところと濡れているところがあって
ずっと気持ち悪いままだ
生まれたときから
だから?
ちがう?
ちがう?
だから?
街も砂だらけだ
眉をひそめるシステムや
目をつぶったままの壁に
手をかけて
お前らのことは
ただ投げつける
金属が路地を鳴らし続ける
慣れた歩行なんてない
破かれては敷かれ
舐められては渇く
薄い輪郭を揺らしては
金属が路地を鳴らし続ける