墨攻

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原作の小説は読んでないのですが、漫画を読んだばかりなので、やっぱり漫画と比較して考えてしまうところがあったのだけど、映画は映画としてよかったんだろう、と思います。主な戦術は結構そのままなんだけど、戦いの描き方が漫画と映画ではかなり違う。漫画ではどちらかというと、人が殺しあう感覚とか感触に焦点があてられていて、人が人を殺すという残酷さの集積として戦争があるような感じだけど、映画では人ひとりが死ぬときの感覚、感触というよりは、戦争のときに起こる不条理な人間の心理的な部分の方に焦点があたっている感じ。これはまったく好みの問題なんだけど、私は前者の方が好きだということがあって、すこし消化不良な部分があったな。とにかく、実際の残酷な描写というのはほとんどない映画だなーと。拷問とか実際の人が死ぬシーンの撮り方はなんだか日本の大河ドラマみたいだなーと思ったり(と思ったら、撮影監督は日本人ではないですか!なるほど。。)。実際の描写としての血が少ない!のでなんだかちょっと物足りない感じがしちゃうんですよね。。でも、そういう描写をおさえている、ということはある意味チャレンジングな映画なのかしらと思いました。そうすると、やっぱり女の人の存在は必要ですね。いなかったら地味すぎる。。決着のつき方も革離のキャラづけもかなり漫画とは違いますね。なんか映画のほうにむしろ、日本的なものを感じたのはわたしだけなのかなあ。。これ多分、欧米の人とかがみたらわけわからないところもあるだろうなー。けれど、革離が経験もほとんどないということにすることで、わかりやすくもなっている気もします。途中、「こんなことになっちゃったのか」みたいな顔で戦禍をみまわす革離の顔をスローでうつすところはかなりいいシーンだなと思います。なので、直接的な描写をさけて、なお、悲惨だった、無益だった、と感じさせるのには、好感がもてました。
戦法はかなり工夫して映像化されていてちょっと感動。。漫画だと農民と兵の区別ってあんまりなくて、みんな素人、素人同士が戦うという風情なんですが、映画では兵は兵としてプロ感が漂っているので、映像としては厚みがありますね。盾や槍のデザインとか、盾でスロープをつくるところとか、いちいち反応してしまいました。気球はよく考えたよなーって、あそこは漫画だと巨大なシーソーみたいなので人をひとりずつとばすことになっているんですが、かなり、こう、、直接的な描写をさけるように漫画といろいろな違いがでてきてるところが、すごく興味深いところです。やっぱり、大陸の規制なんかもあって、年齢制限を設けたくなかったということなんでしょうか?
わきの役者が見たことのある顔ぶれでかなりたのしかったです。チン・シウホウはやっぱり、ああいう煮え切らない悪役が似合いますねー。あと、干承恵とか、午馬とかもでてましたね。あと、王志文の喋り方と歩き方がサイコー。ニッキー・ウーの無表情っぷりも結構よかった。アンディ・ラウはやっぱり、アンディ・ラウでしたが、、ある程度信頼感みたいなものが必要な役柄だし、アンディ・ラウはそのままで自信たっぷり風情なので十分で、そこに初心者でちょっと迷いがちでみたいな設定を加えてあることで、ちょうどいい感じにみえるので、よかったね、という感じ。。でも、ちゃんと演技してたのは、この映画の中では王志文だけって感じもしますね(苦笑)。まあ、言葉の問題とかもあるので、当然といえば当然かもしれないです。
感覚的なものをあたえてくれる映画ではないので、大好き!おもしろい!という感じではないですが、いろんな意味で興味深い、結構いい映画だったな、と。小説の方も読もうっと。