DOG BITE DOG

映画祭ではじめて映画をみました。。
ドキドキした。
というか、六本木ヒルズの映画館にはじめて行った。。
ざあざあ水がながれ、ぴかぴか床がひかっておりました。
最前列でみたので首と目が厳しい感じでしたが、隣の人は業界人ぽくて、たくさん映画見て疲れているんでしょうか、かなり寝ていました。

以下ネタばれあり(なんですが、個人的にはあまり他人にはオススメできない映画なので、ネタばれしてても関係ないかも・・・)

Trailerをみていたので、バイオレンスものだということはわかっていました。わかっていたのだけれど、ここまでバイオレンス度が高いとは思わなかったです。なんというか、延々と殴りあうとか、そういうタイプのバイオレンスではなくて、映画が暴力と死ぬということを軸として進んでいくので、見ている方にも暴力が溜まっていく感じがする。話自体は、カンボジアから来た幼い頃から殺すことだけ覚えこまされてきた殺し屋(エディソン・チャン)を、実はヤクの売人をしていた優秀な警察官の父との葛藤を抱える香港の刑事(サム・リー)が追うというもの。サム・リーは父親との葛藤もあって、もともと常軌を逸した捜査をしてしまうのだけれど、それを押し留めようとする仲間もひとりひとり死んでいき、その過程で皆が常軌を逸して暴力的になっていく様が秀逸。香港の雑多な風景を画面に入れ込んでいくことでそれが象徴的に示される。一番サム・リーによくしていた仲間がまず最初に死ぬわけです。それはラム・シューがやっているんだけど、なんかかっこよかったな、ラム・シュー、いつになくステキじゃないか、とか思った瞬間に死んでしまったのでびっくりしました(苦笑)。一方、なんのためらいもなく、ご飯をがつがつ食べた後どんどん人を殺していくエディソン・チャンが、不法就労の女の子と会って、その子のために奔走するようになる。警察側も女の子を危険にさらしちゃいけないと最初は思っているんだけど、仲間が殺されていくにつれて、女の子に対する行動も常軌を逸していくわけです。印象的なのは直接的なラブシーンがほとんどないところ。それは、エディソン・チャンの暴力や殺人が生きるための手段でしかないってことを浮き彫りにするためなんだろうなあと思ったりしました。どんどんと善と悪が混沌としていって中庸化していくところが印象的だった。というかそれがこの映画のテーマなんでしょうかね。暴力の表出やそこにうまれる人間関係そのものはとても香港映画的だと思ったのだけれど、技術が進歩していることもあるのか、かなり強烈な印象のある映画でした。
ヒストリー・オブ・バイオレンスとすこしアプローチが似ているかなと思った。暴力の裏づけ、逆に根拠のなさというところを同時にみせるというところ。国民性もかなり違うので、同じラインでは語れないと思うけれど、ヒストリー・オブ・バイオレンスをみたときの衝撃と似たような衝撃を感じました。

役者はみんなよくて、女の子(ペイ・ペイ)も、ちゃんと存在感を示していてよかったなあと思いました。エディソン・チャンは、ベルベット・レインとこの映画で、殴られるのが絵になる役者だなあと実感。それってかなり重要なことのような気がする。サム・リーは久しぶりに見たのだけれど、揺れを感じていたところから、尖塔のようにとがってなにも見えなくなる様をいびつな感じも入れてやっていたのがよかったなー。ひとつ思うのは、エディソン・チャンの方はだんだんと揺れていって、サム・リーの方は揺れから単一の暴力性に収束していくという対照があって、それでも最後にはそれがかみ合うということ。わたしは、こういう象徴的な描き方をしていく香港映画が本当に好き。過剰に説教くさかったり教訓めいたりするところもあるのだけれど、なんか好きなんだよなあ。。サム・リーエディソン・チャンは言葉が通じないという設定だから、言葉をかわすことなんてほとんどない。そもそも台詞がすくない映画でした。言葉をかわすことなんてほとんどないのに、彼らの対決というのがすべてを負うわけです。もろもろの過程によって。それがこの映画の肝のような気がします。
あと、音楽がよかったな。殴るときにイヌの吼える声がするのも個人的には好きでした。