ピン


からだを
捨て去って
きみの
こどもに
なりたい
べたついた手を
まぶたに
おしつけると
産毛を
ひかりが
とおりぬけるのが
みえたよ
ラジカセの
ボタンを押すような
手ごたえさえ
ない
去年
きみにもらった
クッキー
おととし
きみにもらった
チョコレート
どれも
食べずに
コートのポケットや
リュックのすみっこから
でてくるんだ
ぐしゃぐしゃに
なって
どろどろに
なって
簡単な日常なら
ふみにじれる
きみの手も
わたしの手も
1キロ先に
飲み干せる水を
運べない
まざりあったものを
誰かに
舐めさせるのか?
必要がないのに
きみが
カカオから
つくった
チョコレートじゃない
きみが
粉をこねた
クッキーじゃない
手ごたえもなく
ぼろぼろの
かけらが
からだの
裏側を
すべりおちていく
まったく
なにも感じない
足音が
どこに向かっているのか
わからない
通行人のことは
蹴らない
おもいで
まるいものを
放った
砂に
めりこんだ
きみの
こどもに
なりたい
ぽす
という程度の
衝撃だけで
しかたなく
うまれたい
ひきちぎって
放ってほしい
ぽす
という程度の
音がする
場所に